積み上げたものぶっ壊して
もう帰ろうか。
上司の目が死んでいた。
気難しい前任の担当者が退職した。
引き継ぎなくして後を任された子会社の経理はズタズタになっていた。
あってはならないことではあるが
まあ気難しいものだから、部長が精神疾患の際まで追いつめられるほどだったから、
誰も彼の経理には触れなかった。覗くこともしなかった。
経営陣さえも藪蛇は御免とした彼の経理の後始末をするのが私の上司だった。
情けないが、後を任された私にはその能力がない。
私の任務は、彼の残した引継書と集計データから、軌跡を辿ることだった。
あるやなしやの知識と拙い説明でも上司は読み取ってくださった。
結果、目が死んだ。
子会社の経理が怪しいのはわかっていた。
しかし会社への影響の度合いを考えれば優先度はどうしても高くならなかった。
私がとりあえず体裁を保って2度の四半期決算を越え、上司がその間に精査と対応。
解決の目途は半年後。
その予定だったのに。
「解決の期限が明日になった」
無茶が過ぎる。
ピンチはチャンス。
わが社では好んで使われる。
異論はない。のだが。
ピンチであることは覆らない。忘れないでほしいといつも思う。