きっと独りで生きていく。

ただのライフログ。

あのキラキラのほうへ

誰も見ていないところに書き留める程度の自慢話しか私にはなかった。

 

推しているアイドルグループのライブに行ってきた。

ステージの上の彼女たちはそれはそれは美しい。

問答無用にエネルギーが押し込まれて、今抱えている問題など明日には解決できそうな感覚さえ覚える。

考えなくとも無理なのはわかっている。

 

こんなに美しく生まれてくる人がいるのだなぁと思う。

鏡を前にして、この顔であと数十年生きるのかとなんとなく折り合いがつかない私には神秘としか思えない。

歌もダンスも、魅せる姿に引き込まれる。

自らの姿と動きと歌声が作品になる世界は夢のように現実味がない。

 

私は幼い頃、ダンスに秀でていたらしい。

両親は幼稚園のお遊戯会か何かでそう感じたらしいが、

あまりに引っ込み思案な子供だったので習わせるのはやめたとのことだった。

人前に出ること、目立つことをとことん避けていた。

 

20歳になったとき、10歳の自分から手紙が届いた。

当時抱いていた夢が列挙されていたが、

挙げられていた職業は縁の下ばかり。

いざ就職したのは18歳だったが、今に至るまで縁の下ばかり。

 

ステージを見上げる度、憧れの感情を抱いている。

踊るのは好きだったから、真剣にやってもよかったかもしれない、と。

だけどステージの上の世界が私にとって幸せではないことが

誰の目に見ても幼いころから明らかだったのだ。

 

天性の歌声と、美しい容姿、自身をもって表現することへの渇望。

キラキラした場所で輝く人々は、違う人生だ。

 

そういう私は小学生のころ、「授業が理解できない」ことが理解できなかったことがあった。

流されるような人生だが、誰もが溺れずにいられるわけでもないかもしれない。

 

 

そうだな。

もし生まれ変わったらあのキラキラしたところへ。

星の数ほどいる人の中で

健康で文化的な最低限度の生活のほかはゲームしかしなかったかもしれない。

 

スプラトゥーン2が面白すぎる。

器用なほうではないから、一緒にプレイしたどこかの誰かにはご迷惑をおかけしているかもしれない。

だけどもう1戦、もう1戦とするうちにこんな時間になってしまう。

 

どうしても集中力がなくなってくるので、合間に家事をはさむ。

1戦終わったら皿を洗い、1戦終わったら洗濯物を取り込み。

戦闘終了からすぐ次の戦闘に入ると、同じ人とぶつかりがちなのでなるべく避けている。

同じ人とぶつかることに問題はないのだが、なんとなくだ。

少し間を空けるだけで、おそらくもう会わない。一期一会だ。

 

誰か知り合いと一緒にプレイもしてみたいものだが、周りにゲーム好きな人がいない。

こんなにプレイ人口がいるのに不思議なものだ。

本当に人が星の数ほどいることを思い知らされる。

いつでも楽しかった事を思い出している

楽しければ疲れないなど嘘だ。

 

全力で楽しめば疲労は蓄積されていく。

全力なのだから。

疲れないのではなくて疲労を自覚できなくなるだけだ。

 

この1週間は仕事が順調だった。

日曜にニンテンドースイッチも手に入れて、帰ってからも全力で楽しんでいた。

業務も落ち着いてきた本日、疲労が噴き出した。

 

ゲームを快適にするために購入した座椅子。

帰宅してからの定位置。

動けないでいる。

 

疲れたら休め。

楽しみが多すぎて、眠るのがもったいないのだけれど

疲労した状態で楽しい時間を消費していくのももったいない。

 

楽しい人生が縮んでいくのももったいない。

土砂降りの涙

折り畳み傘を毎日持ち歩いている。

 

天候によって持って行ったり持って行かなかったりがあると

いつか持ち帰るのを忘れる。

財布や定期やタバコのように

常に持っておくものとすれば忘れることはない。

曇り空を見て本日の持ち物を判断する手間もない。

 

折り畳み傘の中でも割と重いものを愛用しているので

鞄に入っていなければ違和感ですぐに気づく。

傘立てに置き忘れて帰宅することもない。

 

雨は面倒が増えるから好きではない。

ただ、雨を眺めるのは悪くない。

 

雨が似合うと言われたことがある。

褒められたわけではなかろうが、少し嬉しく思ったのを覚えている。

黒く塗らなきゃ生きられない

今日はもう少し早く帰る予定だった。

 

立て続けの会議から戻ってきた上司たちが持ち帰ってきた話が重い。

今からやるのですか、と聞いてしまった。

 

よくもまあこんな難しいことを考えつきますね、と上司のため息。

理解するまでがすでに長い。

あまりに処理が複雑なものだから簡潔に処理できるように組み替えた。

その複雑な処理全てが経営陣には必要なものであったらしい。

 

簡潔に処理できるようにするまでも、それを説明できるようにするまでも

私にとっては簡単なことではなかったからなんだか気に食わない。

 

だが思い出したのは牧場物語2のこと。

不朽の名作だ。

この作品はリメイク版が出ることは決してないと聞いたことがある。

プログラムが複雑すぎて、もはやプログラムではないと言われているそうだ。

 

感動は非効率の中にあるとは誰の言葉だったか忘れた。

大した話ではないが、気に食わないことに変わりはないが、

目の前の誰かが喜ぶ顔を見たければひとまず捨てなければならないものもある。

 

ならばと迷わず捨てられる人になりたかったような気がする。

「どこまでも」がいつの間にか

今日は早く帰ってきた。

 

目覚める。

食事をする。

身支度をする。

ゲームをする。

出勤する。

 

仕事をする。

時々タバコを吸いに行く。

終わったら帰る。

 

入浴する。

腹が減っているなら食事をする。

ゲームをする。

勉強をする。

家事をする。

寝る時間まで時間があるならゲームをする。

 

 

することは決まっている。

自分で決めて、その通りに毎日を生きられることが私にとっての幸せである。

 

仕事でトラブルがある。

急に飲みに行くことになる。

眠る時間が遅くなる。

朝決まった時間に起きるのが辛くなる。

勉強する気が起きなかったりする。

決めたことを決めた通りにできない日がある。

 

決めた通りにいかないのは誰のせいでもない。私も悪くない。

予定通りにいかないときはもう一度予定を立て直す。

立て直したとおりにその日を終えることで、幸せは失われない。

 

自分との約束は最小限に。

約束を守らない自分と、約束を強要する自分を憎んだりしないように。

ひとつずつ積み重なって

今日は早く帰りたかった。

 

スプラトゥーン2をプレイしたかったからに他ならない。

業務のスケジュール上難しいとわかっていたが可能な限り時間は確保したかった。

 

予想以上にトラブル続き。対処の能力は今の私には乏しい。

仕事ができる人というのは、きっと誰よりも早く帰りたい人たちなのだろう。

 

業務で追いつめられるほど、私の部署の人は飲みに行く。

そうして帰りはこんな時間になる。

7時間は眠りたいのに物理的に不可能になる。

所持金86円しかないからと一度ご遠慮させていただいたが

明日でいいからと連れて行ってくださった。

何のために86円の恥をさらしたと思っているのだ。

スプラトゥーンのためだとはさすがに思っていないだろうが。

 

それでも、酒で話す時間は心地よい。

みな生き急いでいるような感じがする。

酒が飲めるのも、目の前にいる人と話ができるのも、

今を逃したら来ないかもしれないと知っての時間だと知っているかのように。

 

 

明日は早く帰る。