きっと独りで生きていく。

ただのライフログ。

眠らない悲しみで報復を誓った

ときどき夢に出てくる人にまた会った。


私も彼女も軍人だった。
国は真っ二つに割れていて、内戦の最中。軍までもが2つになっていた。
かつて仲間だった彼女は敵同士の立場になっていた。


不穏な街を彼女とともに抜けていく。
彼女の顔を知っている人がいるかはわからないけど、両手を後ろにまわしてもらった。
細い両手首を片手で掴み、もう片手には武器を握って、敵を拘束して連行する様で歩く。
信じていいんだよね、と2.3回言われた。


やがて人気のない森林地帯に。
この先に大きな河があることは2人ともよく知っていた。
このまま消されるって予想しかできないんだけど、と彼女は笑う。そう言いつつも抵抗はしない。
その冗談めかした空気のまま、そう、もう消えてもらうんだよ、と答えて手を離す。


あの河を下っていけば、亡命できること。
まだ対立も戦闘も深刻化していない今なら、安全に逃げ切れる可能性が高いこと。
そのための装備が準備してあること。
彼女を逃がすためにわざわざ連れてきたこと。


彼女は抱きついてきた。
暖かくて、小柄で、思ったよりすごく細かった。
妊娠したことを告げられて、2人してものすごく喜んだ。
最近体調が不安定だったのはそれか、と合点した。
相手はなんとなく覚えがあった。彼までは逃がすことはできないけど、きっとまた平和になるまで彼なら大丈夫だろう、と思った。


軍人の彼女に細やかな説明は不要だった。装備を見せればそれでよかった。
本当にありがとう、またね、平和になったときに戻ってくる。
そう言ってまた抱きついてきた。


死亡フラグだ、と思ったけどそんな感じがしない。
誰もが生きているうちにこの国の平和はまた来る。
また戻ってこれる。そう当事者たちが予想している。
そんな戦争もあるもんなんだなと彼女を見送りながら考えた。
私は懐かしい、陸上自衛隊の戦闘服に身を包んでいた。