未来の自分に宛てて書く手紙なら
20歳を迎えた年に、10歳の自分から手紙が届いた。
たぶんまだ実家にあると思う。
自分が書いたと思うと目を背けたくなるほどの悪筆だった。
祝儀袋の表書を上司から頼まれるようになるなんてあの頃は想像できなかった。
昔から情熱をもって取り組むことなどなかった。
「将来何になりたい?」と聞かれるたびに答えは違っていた。
だけど、10歳の私は夢を綴っていた。
そして、20歳の私はその職業に就いていた。
今は、10歳の自分も20歳の自分も見向きしなかった職に就いている。
今までの仕事で最も自然に向き合えているように思う。
行き着いた、と表現するとしっくりくる。
夢は叶ったはずだったのに。
こんなはずではなかった。
だけど今までの人生、いつだって「今」が一番幸せだった。
「将来何になりたい?」
何になってもいいけど幸せになりたい。それだけ考えてきっと今まで来たんだろう。
回り道だったけど、いい景色だった。
丘の向こうが見えるのは、丘を登りきってから。
海の向こうを知るのは、海を渡りきってから。