きっと独りで生きていく。

ただのライフログ。

君の声が戻ってくる

皆、桜が似合う姿をしていた。


自衛隊員となって2年目の春。
新入生を迎えるパレードに向かう道。
地獄のような日々が始まったばかりの頃、すでに満開になっていた桜の花弁を浴びていた。

始まったばかりだったけど、もう長いこと地獄に囚われているような気がしていた。
桜が咲いていることに気づいたのはようやくそのときで、きっと顔も上げず瞳も死んで息をしていたのだろうと思う。


目の前に連なる自分と同じ紺の制服を着た同期と先輩たち。
舞い散る桜色はよく映えて美しかった。
そういえば、陸は緑、海は黒、空は藍、
全て桜の似合う色をしていたな
我々は桜が似合う姿をしているのだな
そう思ったことだけ、地獄の日々のその時間だけ、妙に覚えている。


制服はもう脱いだ。
今は黒い服をよく着ているが桜の季節はどうだろうか。
今の自分にはきっと桜は似合わない。
少なくともあの頃の自分ほどには。


それはとても美しかった。