君は冬の夢を見て鳴く蝉
よく頑張っているよ、と言った瞬間、彼女は泣いた。
ときどき夢に出てくる人がいる。
つい先日も出てきた。
仕事中の私の手を引いて、半ば強引に休憩に誘われた。
最近体調がよくなくて、そろそろ限界なのだと言う。
でも今の仕事を諦めたくないのだと言う。
彼女の傍らに座って話を聞いていた。
お互い仕事をしているのに妙なのだが、私も彼女も高校生だった。
何故だか彼女の全てを知っている私は、学校辞めるんだね、と先んじて言った。
目を合わせずに彼女は頷いて、頑張りたいから、と呟いた。
よく頑張っているよ、と言ったら、泣いた。
辛い決断だったろう、と言ったときは、泣かなかった。
こういう夢を見るときは、この「彼女」はもう一人の自分なのだということらしい。
でもなんだかそんな感じがしない。
ときどき夢に出てくるこの人に、起きているときに会ったことはない。
次に会えるのはいつだろうか。
今回は今までで最も歳が近かった。
どんな間柄で今度は会うのだろうか。